司馬遼太郎が考えたこと 6
「『坂の上の雲』という作品が、小説でも史伝でもなく、
単なる書きものであると私がしばしば、それもくどいほど
断ってきたのは、自分自身が小説という概念から
解放されたいためであった。」
「 小説とは要するに人間と人生につき、印刷するに足るだけの
何事かを書くというだけのもので、それ以外の文学理論は
私にはない。以前から私はそういう簡単明瞭な考え方だけを
頼りにしてやってきた。いまひとつ言えば自分が最初の読者に
なるということだけを考え、自分以外の読者を考えないようにして
いままでやってきた(むろん自分に似た人が世の中には
何人かいてきっと読んでくれるという期待感はあるが)。」
「 結局、武力的な力の外交というものは自然とでき上がるんです。
ところが、自分はひよわいんだというところから出てきた
外交というものは本物ですね。弱者の知恵というものに、強者は
かないませんよ。」
「日本人は模倣的な民族だと言われているけれども、
当り前のことですね。ヨーロッパ文明も模倣によって
でき上がったんで、それは少しも恥じるにたりないんですけれども、
日露戦争においては多分に独創的なものが加わっています。」
司馬遼太郎が考えたこと〈6〉エッセイ1972.4~1973.2 (新潮文庫)
- 作者: 司馬遼太郎
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